プロボイ クリエイティブ・ディレクター石田氏による、
開発の思い出や日常の色々なことを日記形式で紹介はこちらでご覧になれます。
http://blog.livedoor.jp/noritakaishida/
その中から「GSX221/222」に関する記事を抜粋して掲載しています。


GSX SMART 221 222

【デザイン・コンセプト】
SMART AUTOMATICシリーズの新作GSX 221&222は、XXシリーズの硬派版として企画され、村田モデルと同時期にデザインをスタートした。村田モデルは質感からデザインのトレンドまでをスマートと違った角度で作ったモデルだ。それはいわゆる「楽しいアート」から本格的な「造型としてのアート」への変革だった。これは、「楽しいアート」路線を止めるのではなく、「200」シリーズの新たな挑戦のスタートだった。

1998年より始まったSMARTは、10周年を迎えようとしている。SMARTシリーズは、「JUS02」、「キューブリック」、「森山大道」といった「本格的なアート」作品をリリースしてきた。この流れで「村田蓮爾」モデルは企画された。このモデルのケースは「もうひとつのSMART」の定番となっていく事を当初より想定していた。昔からの「SMART」のファンにとっては、この新しい路線は、「SMART」ではないかもしれないし、また新しいファンにとっては「スタイリッシュ」に見えるかもしれない。全く異なるモノにしたかったので、両者は極端に仕上げや、素材感を変化させた。

「蓮爾」モデルとGSX221、222は、GSX1999からの番号ではじまるボラード グランドコンプリケーションの素材感を感じさせる。旧来のスマートは「鉄のぬくもり」をテーマにしたものであったけど、この「蓮爾」モデルや新型は「鉄っぽさ」をテーマにした。言い換えれば、「痛い」感じのデザインである。旧スマートのコンセプトは、身近な素材としての「鉄」と、楽しい「デザイン」という視覚的な方向性だった。新型は、ボラードと同じ「鉄」のひんやり感、凛とした感じや、手にしたときの「金属感」という「感触」を大事にした。現代の「格好良さ」を追及したモデルである。
10年前はちょっと楽しいエッセンスがあるものが格好良くて、センスがある感じだったけど、今は格好良さの基準が当時と違うと思う。ヒーローじゃないが、融合していくような感じがほしかった。このテーマは、GSX900や500で実践済みだが、両者のデザイン・コンセプトは流線型をベースにした軟体動物の世界観であるのに対し、スマートの新型は「生物感」「生命感」を消したもので、それが「現代の格好良さ」と考えた。

【新SMARTの方向性】
GSX200シリーズでありながら、別に名称をもつ「SMART」。スマートの名前の意味は、「シンプル」「マテリアル」そして「アート」の頭文字を並べたもので、また、スマート本来の意味である「頭の回転がいい」「格好いい振る舞い」の意味をもつ。
新型で、あえて波状の針も、丸いロゴマークもなくしたのは同じ名前のつくブランドでありながら、それは継続シリーズではない、いわゆる「シンプル」「マテリアル」というテーマは同じであるが「アート」の方向性が「視覚的」か「感触」という別のテーマを持つという意思表示をしている。

「視覚的」スマートさが、たとえば着こなしだったり、お洒落なメガネだったり、もしくは部屋のインテリアであったりというものであれば、「感触的」スマートさとは、目にしなくてもわかる「香り」であったり、手をつないだときの「やさしい感覚」だったり、いわゆる「言葉より語るもの」という事だ。

新型スマートは「言葉より語るもの」。腕にして街を歩いたとき、素敵な使い心地と適度な重さ、見られている事の気持ち良さを大切に考えた。

【スマートいう言葉】
最近、巷では「スマート」という言葉が氾濫しているが、使い方がめちゃくちゃなものがほとんどだ。スマートという名称を僕が1998年につけたときには「スマート」という名称のモノは皆無だった。一号機種は(当時では)「分厚い」時計で、どこがスマートなのかと言われた。だが、「スマート」の意味は「細い」ことでもないし、「スタイルがいい」人の事をいうのでもない。それらは元々、和製英語で、日本人が間違った使い方をしてきたものだ。外人に「君はスマートだ」と、スタイルがいいという意味で使っても、いい反応はしない。「スマート」には、もともと「頭の回転がいい」という意味や「振る舞いが格好いい」という意味があり、また、いやみな言い方として「ずるがしこい」という意味もあるのである。スタイルがいいという言葉は「スタイリッシュ」というし、細いことは「スレンダー」という。だから、「小さいこと」「細いこと」を「スマート」とは呼べないのである。

だから、GSX「スマート」は別に「スタイリッシュ」であるとか、「形」で「スマート」という名称を付けたのじゃない。言葉の元々の意味は、もちろん時計にも込められているのだが、実は使う本人にそうあってほしいという意味を込め、そんな人に使ってほしいという意味を込めた名称なのだ。歩きタバコはしないとか、紳士的な振る舞いをする人とか、レディをイメージさせる知的な人だとか、アートをこよなく愛するカッコウいい人だとか、そういう行いを出来る人。人は生きているが、世界では人と交わっていくのだから、常に人から見られていることに気をつけて生きて生きたい。それは格好良く生きること。そんな人を「スマート」だと考えている。

【価格について】
「村田蓮爾」モデルと同じレベルで造られた、GSX221、222の税抜き38,000円、43,000円という価格は戦略プライスだ。通常なら5万円台のモデルです。来年には、おそらく、その価格になります。GSXでは、初回生産分は常に価格設定を下げている。これは早く買ってくれた方に対するお礼の気持ちもこめている。「村田蓮爾」モデルなどのコラボレートものは価格変更が無いので、通常価格を最初から付けている。日本の時計産業は基本的に価格の変更をしないのが普通。一度出したモデルの価格は変わらない。日本の商品は短命だったので、その必要性もなかった。しかし、GSXの場合は同じモデルが10年間販売される事もある。海外と同じ考え方だ。だから、価格の変更もあった。しかし、それとは別に通常の価格設定より低く、約一年間は販売をしている。ある程度落ち着いた時点で価格を戻している。つまりこのスマートの新型の定価は本来5万円を超えている。だからこの質感と感触で、この価格は破格なのだということをまずは頭に入れてから「スマート」を嗜んでほしいなと思うわけです。