プロボイ クリエイティブ・ディレクター石田氏による、
開発の思い出や日常の色々なことを日記形式で紹介はこちらでご覧になれます。
http://www.gsx-watch.com/provoi.html
その中から「
2006年06月26日(月) GSX1999SBK-2  1999の復活はプロトタイプ 」を抜粋。


2006年06月26日(月) GSX1999SBK-2  1999の復活はプロトタイプ

7月に待望の1999が復活する。

ものには「復活」「復刻」がある。
「復刻」とは当時をオリジナルに近づけてつくるものであり、 「復活」は当時をモチーフにして、そのテーマや存在意義を
この時代に創りなおすことである。
つまり、復活は、その蘇りがパワーアップしていることも多々ある。

1999の復活はどうか? はっきりいって、写真ではわからないほど、かなり「格好いい」。
僕としては、今回の二本は今までのボラード史上最強の二本である。

で、1999SBK-2は、一言で言うと、とてもヴィンテージしている モデルである。 テーマはもちろん「空」である。
しかし、ファーストモデルが「トップガン」のような戦闘機なら、今回のものは戦時中のプロペラ機だろう。
文字盤からしてとても古臭い。
とくに針は秀逸。
クリーム色っぽさがとてもいい。
この組み合わせはオメガのスピードマスターの世界観であるが、とくに「MARK」シリーズ(IWCにもあるけど、オメガにもある)の感覚である。ただ、当時のものだから、その当時の最善でつくられているが、ボラードは今の技術で、当時の感覚をつくるわけだから、それはとても難しかったわけです。

いろんなブランドが復刻という名のもとで、実際は復活をつくっているわけであるが、ボラードは「復活」という名のもとで、実際は1999のファーストモデルと異なった、ある意味、昔のモデルを創っているわけです。

それはベースがあるのではないから、復刻ではない。
そして1999と同じものを作っているのではないので復刻ではないのです。
それに復刻とは、ある程度、時が経たなくてはその存在意義をなさない。
時が経たずにでてくるものは「ただの再生産」だからね。

1999SBK-2は、1998年の頭あたりからデザインに入ったものです。
シェルマンさんが、グランドコンプリケーションを発売し、チックタックさんが、同じくグランドコンプリケーションの低価格なもの(10万円)を発売したが、それと同時期にデザインをしていたものだが、グランドコンプリケーションというムーブメントだけが一人歩きして、シェルマンの12万円に対して、価格競争の感があった。
実際はその品質や素材が異なるから、別物だとはわかっているものの、お客様から見れば、同じ機構のもので価格差はなにと当時は思ってしまうと僕は思った。
だから、まずは他社よりも一年は発売は待とう(シェルマンのものからは2年という意味)と思ったし、やるならば316Lを使い、最高品質で、無骨なすげーのを作ってやろうと決めたのです。

もちろん価格も高いものになるだろうけど。

一番になりたかったのは、「品質」と「価格」だけではなかった。
「重さ(初期型200g)」「大きさ(43mmオーバー、厚さも一番)」
「パーツ数(相当多い)」「機能数(計算尺など、他よりも4多い)」
「共有パーツなし(他社のものは裏ブタなどはすべて共通。GSXでは共通パーツはない)」

当時、デザインはとてもたくさんのものが考えられた。
ベゼルはとくにいろんな機能で考えられた。
唯一、リベット仕様のデザインもあったが、それだと機能が曖昧だから、採用をやめた。そのデザインはそのままダースベイダーに採用した。

ケースの形状はかなり早い段階で決まった。
デザインのベースは「無機質で質実剛健」であるが、その時計のモチーフは「ヴェンチュラ」「IWC(アクアタイマー)」である。

さて問題は文字盤である。
アートなモノや、クラッシックなものや、とにかくたくさん考えた。
そして最終的にアビエーションタイプで二種類になった。
それは「現代的」なものと「過去的」なものだ。
結果、「現代的」なものを1999SBKとして発表した。

それから6年。ここに当時のダメダシモデルを発売するわけだが、それは時代が変わったことを意味する。

IWCが昨年、パイロットウォッチのシリーズに「スピットファイア」というシリーズで「現代的」なシリーズを発表した。
今まで「過去的」なモデルのみだったパイロットシリーズに、スーツにもできるシリーズを投入した。
僕は1999年のときに、IWCが過去的なモデルをもって確立したシリーズに感化されて、それをオマージュに、そしてヴェンチュラのアート感を意識して、ボラードをつくった。
だから、そのモデルは「過去的」ではなく、「未来的」な現代的なモデルとなった。
GSXのテーマである「早すぎない、遅すぎない、少しだけ先にあるデザイン」からも、当時は絶対的に「過去」を思い起こすモデルを作ることはできなかった。そしてそれがGSX900などでも徹底したポリシーになっていった。

だからこうして、2006年に当時のデザインをだすことになって、ある意味、時代だなーとか、懐かしいなとか思ってしまう。
昨年、IWCが投入したシリーズは一年限りで終わり、今年、スピットファイアはすべてモデルチェンジされ「シルバー文字盤」だけとなり、黒いものはやはりモデルチェンジされ、今までの「過去的」なポリシーを継続していくことになった。
これはある意味、IWCのパイロットシリーズがそれだけ強く人気の支持に支えられてきたことを意味するから、GSXとは同じではない。

しかし、このIWCの出来事は、ある意味、僕には刺激になっていた。
また、パイロットのドッペルクロノをTOKIOの国分さんに販売した際にも、国分さんは、「定番」か「スピットファイア」か、どちらのドッペルクロノにするか相当迷っていた。
僕は、自分の判断として、定番をお勧めした。少なくても、あんまり長く、スピットファイアは生産されないだろうなと(まさか一年だけとは思わなかったが)思ったし、国分さんはカジュアルが多いと思ったからである。

このように、同じ機種で、二種類あるとある意味迷う。
だが、生産する僕としては、どちらも創りたいことがよくある。

今までだと「GSX005」「インパル」。それは実際に二種類を作った。
また、GSX100UMB-1は、特別バージョンとして艶ありをつくった。
また、スマートでは、三原色のものを二回作っている。
夜光なしと夜光ありです。

実際、作らなかったものでは、バットマンの「バットシグナル」。
スマートスタイルのものだけど、ロゴマークを実際のものに近いものと、丸にあわせたものと二種類考えて、試作した。
当初はどちらも発売する案もあったが、ひとつにした。

企画して試作では、いろんなプロとタイプもつくるから、こういうパターンはただのプロトタイプとなるのだろう。
しかし、バットマンの場合は、本当になくなくやめたものだからちょっとプロトタイプとは違うのかなと思っています。

今回のように6年たって、当時のものを出すのは、GSX初。
さらに、2000BBKと対抗だった、グレーIPもやはり5年ぶりの敗者復活のようなものです。
こちらはどちらかというと、当時安定してつくることができなかったためにやめたこともあって、二種類発売予定だったものを2000BBKだけにしたものですから、生産中止になったものと考えてもらえばいいのですが、グレーIPモデルは、とても渋いモデルになっています。
とくに文字盤はカーボンファイバー部分はとても深いものになっています。
ブラットピットのものと同じ。
そしてスモールセコンドの三箇所はブラックにして、高級感をだしてみた。

どちらもとてもスポーティなモデルであるが、ヴィンテージな感覚を残している。

近年、ジーンズに、ヴィンテージという世界があり、それをリメイクするというものが市民権を得て、今年の夏あたりは、
5年前前後に流行したブラックデニム、もしくは生デニムがまた人気を盛り返していて、ハードな破れている(デストロイともいう)ジーンズが落ち着いてきている。 グッチ、プラダ、ドルチェ&ガッバーナの新作は生デニムが主流ではないものの、目新しい。
このような流行の流れはだいたい5年周期でやってくる。
時計も同じで、今年、また900がスマートよりも盛り上がってきている。
そして、今年はGSXでも、いくつかのヴィンテージ感覚のものを考えている。
ある意味、ブラックモードコレクションはそのスタートでもある。
シリーズとしてだしているものはどれもがクラッシックです。
とくにALL OF BLACKSは、とてもファッション的なものだ。

ということで、1999は7月にお目見えする。
これは是非、店頭で手にとって見てください。
その質感とその古きよき感覚はとても心地よいし、格好いい。
グランドコンプリケーションであるかどうかは意味のない対峙であることに気づくでしょう。

それは、これがボラードであることで完結されていて、グランドコンプリケーションがおまけのようなものだということを実感
するということです。

GSX1999SBKを発売したときもそうでした。
そしてそのときのキャッチフレーズは「重力は憂鬱だ」というもの。
重くて、あなたには使えませんよという告知をうったのです。

1999SBK-2は「いまさら、古臭い」というテーマをベースに、600と同じ「懐かしくて新しい」というところを前面にしていくことだろう。